風俗嬢のヒミツ恋愛~俺様ホストと真面目な美容師~ 第1話 『Schwarze wolf』の解散

私が命を捧げても良いと思って応援し続けていた人気V系バンド『Schwarze wolf』が、突然の無期限休止を宣言したのは先週のことだった。

「また絶対、このメンバーでお前らの前に戻ってくるから!」

ファン限定ライブのラスト、私は最前列でボーカルのレオさんの言葉を聞いたんだけど、唐突な話すぎて、その内容をなかなか理解できなかった。

もしかして、ヘドバンしすぎて幻聴を聞いているの?
そんな風に考えようとしたんだけど、頭で判断する前に大粒の涙は勝手に溢れてきた……。

私は現在25歳。
周りの女の子は、恋や仕事に一生懸命みたいだけど、私は学生時代からずっとバンギャをしてきた。

『Schwarze wolf』を追いかけ続けるために、休暇を気軽に取れる上に高収入だったからって理由で、迷わず風俗で働き始めたくらいハマり込んだ。オシャレやダイエットだって、ライブでレオさんに見られて恥ずかしくない格好でいたかったからこそ続けられたの。

そんな私の全てだった『Schwarze wolf』の生歌が、もう聞けないかもしれないなんて……!

ショックで一週間、仕事も休んで引きこもった。
眠りから覚めたら全部夢だった……なんてことないかなって思ったんだけど、現実は残酷だ。

ぐぅ……。

さすがに一週間も引きこもっていると、食べるものがなくなってしまう。
本当にマンションから一歩も出なかったから、そろそろ食料を調達しないと。

私は髪もセットせず、ノーメイクにマスクだけした格好で、近所のコンビニを目指した。
まさか、こんな油断した格好の時に限って、見知った顔を見ることになるとは思わなかったんだけど。

「あれ、遥さん?」

コンビニで出会ったのは一人の青年、翔くんだった。
同い年で近所に住んでいる彼は美容師をしている。実は、彼が美容師見習いをしていた頃からの知り合いで、今でも私の髪は彼にセットしてもらっている。たまに一緒にごはんを食べることもある仲なんだけど、まさかこんな日に出会うなんて……。

「やあ、久しぶり」
「すごい疲れた顔してるし、髪もボサボサじゃないですか。どうしたんですか?」
「ちょっと風邪を引いちゃっただけだから心配しないで? 今日はごはんを買いに来たの」

さすがに『Schwarze wolf』休止のニュースがショックすぎて寝込んでいた、なんて言ったらドン引きされると思って、テキトーなことを言っちゃったんだけど……。

翔くんには逆効果だったっぽい。

「体調を崩しているならお弁当とかじゃなくて、ちゃんと栄養のあるもの食べなくちゃダメですよ!」
「あ、ほんともう、治りかけだから、お気になさらず……」
「ちょっと今から食材を買って家に行きますから、遥さんはすぐに帰って寝ていてください。治りかけこそ油断しちゃダメなんです。しっかり食べてちゃんと睡眠を取りましょう!」

普段は穏やかな性格の青年なんだけど、たまにお母さんみたいなことを言う翔くん。
178cmの優男に諭されて、私は強制的に帰宅させられちゃった。

昔はほかの友だちも誘って、家でタコパとか、したこともあったっけ。
ちょっと懐かしいな、翔くんの手料理。

……あ、男の人が来るのに、部屋には脱ぎ散らかした服が散乱している。
さすがの翔くんもガッカリするかもしれないので、彼が来るまでに掃除しておかなくちゃ。

ほんの一時間前までは部屋で泣いていたくせに、いつの間にか部屋を掃除することで頭の中がいっぱいだった。
これも、翔くんの癒やしオーラのおかげなのかな。

つづく

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